2012年夏のコミックマーケットC82で先行販売されたmamenoiの1stアルバム

買ったのは去年のC82だが今更レビュー


mamenoiは、やなぎなぎと、コンポーザーのMANYOのユニット。過去に「空想活劇・弐」で楽曲提供している。今回のアルバムはその「空想活劇・弐」に収録されている「kleinchen」の世界観を再構築して物語性を含めた作品。
全体を通して一つの物語になっている。

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人生初のコミケ参加だった



その初めてのコミケであるが、夏のコミケはまさに地獄だった。
狭い、臭い、暑い三拍子揃って待ち時間も長いので精神的にボロボロになる。
ちょっと夏のコミケをなめていた




そして、10時に開場してさっそく企業ブースに向かったのだが、僕が到着した時には先着特典のサイン会に参加できる整理券の配布はすでに終了しており、スリーブケースしかもらえなかった。

そのスリーブケースはこれ
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ケースに入れるとこうなる
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ジャケットの絵が完成されたようになる。



収録曲(12曲、52分)
  1. sh,57.101
  2. 青色灯
  3. Kleinchen
  4. パンタレイ
  5. ラブラドライト
  6. eironeia
  7. phaetone
  8. 旅の終わり
  9.  Tachyon
  10. Lacunarity
  11. トレイル
  12. 手紙


☆sh,57.101
作曲:mamenoi

本アルバム、この物語の序章となるインスト曲。
神秘的な風景を思い起こさせるメロディで始まり、 徐々にやなぎなぎのコーラスが入ってきて、水の音が聞こえてきたりメロディも少しずつ盛り上がってくる。
二曲目の青色灯に繋がっている


☆青色灯
作曲:やなぎなぎ
作詞:MANYO

メジャーの曲と比べると珍しく、やなぎなぎが作曲して歌詞をMANYOが担当している。
sh,57.101から続いて静かで幻想的なメロディから始まって、おとなしめの曲かと思いきやサビでいきなり盛り上がり、また静かになっていく。とても不思議な曲だ。
やなぎなぎの作曲だとアンサンブルで魅せるようなことはあまりしない印象があるが、この曲はアルバムのコンセプトに合わせて、寒い景色をイメージさせる冷たい音がする。水の音も印象的だ。


☆Kleinchen
作曲:MANYO
作詞:mamenoi

「空想活劇・弐」に収録されていた曲。「Tachyon」はこの曲をコンセプトとしてつくられた。
少女がキミを探して旅をする曲…なのだが…
さっぱり歌詞の意味が分からない。

難解な歌詞はやなぎなぎの曲には多いが、これは正直言ってわからない。キミを探して船に乗り、加速していくというテーマしかわからない。 しかし、それだけ解釈の幅が広がるというのも面白いかもしれない。


テンポの速い曲だが、最初はプロローグのような感じで徐々に盛り上がりをみせていく。バックコーラスがとても美しい。
サビに入ると一気に駆け上がるメロディとボーカルがマッチして頭に響き渡る。この快感はなかなか他の曲では味わえないだろう。幻想的なバックコーラスは最後まで続き、これが曲の盛り上がりを支えている。最後のボーカルとバックコーラスの組み合わせは一気に脳内を駆け上がってくるスピード感に満ちていて鳥肌ものだ。



さすが一つのアルバムのコンセプトになるだけあって完成度が半端ではない。 かなりお気に入りの曲である。



☆パンタレイ
作曲:mamenoi
作詞:mamenoi

全曲の中で唯一、作詞作曲がMANYOとやなぎなぎの共同である。
水のある景色を思わせる明るく軽快なメロディが印象的だ。歌詞もとても幻想的で、とても落ち着く一曲。
爽やかな感じの曲だが、ここにも主人公の、キミを追い求める様子が描かれている。
ピアノをバックに、様々な楽器のアンサンブルがとても心地よい。


☆ラブラドライト
作曲:やなぎなぎ
作詞:MANYO

この曲はやなぎなぎ作曲だが、テンポがとても速い。水をイメージさせるような音がまた印象的な曲で、歌い方も他のCDの曲よりずいぶんハキハキしている。
序盤は明るく歌っているが、サビに入ると一気に盛り上がってくる。 また、全体的にテンポが速いので気持ちが盛り上がる曲でもある。
しかし、歌詞はそこまで明るくはなく、主人公の叫びが描かれている。キミを探す途中大きな不安感に駆られるがそれを振り払い、再び旅に出る場面だ。


☆eironeia
作曲:MANYO
作詞:やなぎなぎ

この曲は厳かな感じのメロディが心に残る。このメロディがつぶやくようなやなぎなぎのボーカルと歌詞と合わさって、ボーッと立ち尽くして空を見上げているような景色が思い浮かぶ。
物語の中ではキミを探す中、主人公が知らない星で一人で彷徨う場面だろう。
心の嘆きを周囲の景色と重ねて表現しているところがやなぎなぎらしい。 
時間がひたすら延びていくような感覚を味わう一曲。聴き終わると聴き始めがずいぶん前のことだったかのように感じる。



☆phaetone
作曲:やなぎなぎ

旅が終盤に向かいつつあるなか、暗いトンネルを歩き続けているかのような曲。歌詞はないが、バックコーラスがとても儚い雰囲気を持っている。
メロディが、暗いトンネルを抜け出せない苦しみがにじみ出てくるようで、最後には暗いトンネルを抜けたかのようにフッと終わる。



☆旅の終わり
作曲:やなぎなぎ
作詞:MANYO

旅の終盤、主人公がキミに出会うまでの最後を描いた曲。 暗いトンネルを抜けたかのような、開けたメロディが流れるが、歌詞では中盤まで、旅は終盤にも関わらずキミに出会えない葛藤に苦しむ様子が描かれている。一番の「旅の終わり キミをまだ見つけられない 世界の果てで一人膝を抱えて」という、絶望しているような歌詞から、二番の「旅の終わり 二人のターミナル見つけた まだ触れられないその腕そのぬくもり」への変化が希望を見つけた主人公の心情を表現していると思う。

軽快なサウンドと、旅の終わりを思わせる歌詞が切なさを感じさせる。



☆Tachyon
作曲:MANYO
作詞:やなぎなぎ

このアルバムのタイトル曲。タイトルの「Tachyon」は船の名前。主人公はTachyonに乗ってキミを探しに遠い星まで旅をした。タイトル曲にふさわしく、盛り上がるアップテンポな曲で、とても迫力がある。物語の中でも、キミと出会う重要な場面だ。
主人公は長い旅の末、キミを見つけ、Tachyonでもといた星へと帰ってゆく。
Kleinchenとは一風変わった明るいサウンドが、キミとの再開というクライマックス、Tachyonで光を超えて帰途に就く二人のスピード感にマッチしている。

ようやくキミと出会えた主人公の、「わたしたちの物語」という言葉が今までの物語を凝縮した重みのある言葉に感じられる。 



☆Lacunarity
作曲:MANYO

キミを連れて星へと帰る場面を描いた曲。インストでMANYO作曲。
あれ?やなぎなぎ関わってない?笑


疾走感あふれる曲で、ところどころに流れる、今までの曲の逆再生が帰ってゆく彼女たちの様子を物語っている。行きに来た道をより速いスピードで帰ってゆくイメージだ。




☆トレイル
作曲:MANYO
作詞:やなぎなぎ

物語も終盤になり、浜辺での二人の様子が描かれている。
爽やかで静かなメロディが光に満ちた浜辺の光景をイメージさせる。
歌詞をみると、浜辺にいることは間違いなく、その白砂の感触が描かれているのだが、序盤の「波だけが知ってる 捲られることないページを」 という表現は、帰りの途中で何か問題が発生し、帰れなくなったということだろうか。「僕たちは知らない 繰り返し欠けた歴史を」や「肩を寄せて見上げた星 あのどれか一つがきっと僕らのふね」といったところからも、もといた場所に帰れたわけではないことは読み取れる。
最後は、小さな希望を信じて進む二人の姿を描いて締めくくっている。



☆手紙
作曲:やなぎなぎ
作詞:MANYO

物語の最後の曲。美しいバックコーラスと爽やかなボーカルがマッチしている。
この曲が結末になるわけだが、最後に主人公は書きかけの手紙を残して部屋を出ていく。「見える景色 まるでオーロラのようで」というところが、トレイルでたどり着いた星の様子と一致しているのでもといた星ではないとは思う。
部屋があったということはこの星にも人が住んでいたのだろうか。主人公たちはその住人を探してまた旅に出たのかもしれない。ブックレットでトレイルの歌詞のところ見るとTachyon壊れてるし

静かに淡々と進む曲が、現実の残酷さを含みながらも心を落ち着かせる一曲だ。

※[2013.06.29]追記
「手紙」の解釈について考えた
mamenoi「Tachyon」の解釈についてちょっと考えてみる 





二人の物語はこの12曲で完結する。
全体で一つの物語といっても、あまり直接的過ぎて個々の曲が曲として成立していないと意味がないのだが、このアルバムは個々の曲が一つの曲として独立しながらも、通して聴くと一つの物語が出来上がる。点と点を結んでいくような感じだ。
公式サイトでの告知もないので知らなかった人もいるかもしれないが、 今までなかったコンセプトでつくられたこのアルバムはまた違ったやなぎなぎの魅力を一時間かけて感じられるので、他のメジャー曲を聴いている人には一度聴いてみてほしい。他の曲の印象も変わってくるかもしれない。